アフリカ大陸の真ん中に、「千の丘の国」と呼ばれる場所があります 。緑の大地がどこまでもぽこぽこと幾重にも連なる、ルワンダです 。一九九四年の悲しい出来事を乗り越え、国をあげて大切に育てられてきたのが、この国のコーヒーなのだそうです 。今日ご紹介するのは、そんなルワンダから届いた、とてもやさしくて、どこかほっとする一杯です 。
産地は、ルワンダ東部県の、カヨンザ郡というところ 。そこは、赤土のうえに見渡すかぎりバナナの木が揺れる、バナナの大名産地なのだそうです 。市場に出かければ、バナナが山のように積まれているとか 。そんな陽気でのどかな景色の中でコーヒーを育てているのは、「TUK農協」のみなさんです 。キニヤルワンダ語で「たくさん収穫や生産ができますように」という、なんともストレートで愛らしい願いが込められた名前です 。
おもしろいのは、ここの農家さん百六十三名のうち、なんと百五十七名が女性だということ 。ルワンダのお母さんたちが、おしゃべりしながら、あるいは歌いながら、赤いコーヒーの実を丁寧に手摘みしている姿が目に浮かびませんか。彼女たちは、年に一度のコーヒーの収穫期が終わると、今度は結婚式などの祭事の際に使う「アガセチェ」という伝統的な贈り物用のバスケットを編むそうです 。そのきめ細やかで丁寧な手仕事の気質は、コーヒー作りにもしっかりと表れていて、農園も精製のための加工ステーションも、隅々まで本当にきれいに手入れされています 。
さて、そろそろお湯は沸きましたか?
ゆっくりと、お気に入りのカップに注いでみてください。このコーヒーの精製方法は「フリーウォッシュ」といって、果肉をきれいに水で洗い流す作り方 。だからこそ、とても透き通った味わいになるのです。
一口ふくむと、シトラスの繊細な風味と、じんわりとした甘みが口いっぱいに広がります 。まるで上質な紅茶を飲んでいるような、軽やかでティーライクな口当たり 。 おすすめの浅煎りなら、オレンジのような酸味と風味で、繊細なのにバランスが絶妙です 。中煎りにすると、レモンピールのようなキリッとした苦みのあとに、サトウキビのようなやさしい甘さが追いかけてきます 。そして深煎り。シトラスの香りはそのままに、こっくりとした甘さが長く続いて、冷めてくると今度はストーンフルーツみたいな甘さまで顔を出すんです 。
どの焙煎度合いでも、ルワンダの女性たちの「おいしくなあれ」という声が聞こえてきそうです 。
きれいに手入れされた農園で、たくさんのバナナの木の下で、たっぷり笑って育てられたウーマンコーヒー 。 そういえば、このコーヒーの物語を紡いでいて、一つだけ困ったことがありました。 資料に「バナナがたくさん」「市場にはバナナの山」なんて何度も書かれているものだから、すっかり私の頭の中がバナナでいっぱいになってしまったのです 。
今、目の前にあるのは、最高に美味しいシトラス風味のコーヒーなのに 。どうしてか無性に、甘くて黄色いバナナが食べたくなってきてしまいました。 今日のティータイムのお供は、奮発して買ってきたショートケーキの予定だったけれど。戸棚の奥にあったバナナチップスの袋に、こっそりと手を伸ばしてしまう私なのでした。
【文・ルーエ(Ruhe)】
ドイツ語で「安らぎ」を意味する名を持つ、nnscoffee専属ライター。海を越えて届くコーヒー豆が、どんな風に育ち、どんな人たちの手を渡ってきたのか。その物語をすくい上げ、一杯のコーヒーに添えてお届けするのが私の仕事です。お湯が沸くのを待つ間や、香りが立ち上る瞬間に。日常の足をとめて心に余白ができるような穏やかな時間を、皆さまとご一緒できれば嬉しいです。

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