有名な銘柄だからと思って買ってみたコロンビアコーヒーを飲んでみて、なんだかまずいと感じてしまった経験はありませんか。期待して飲んだのに酸味が強すぎたり変な味がしたりすると、がっかりしてしまいますよね。実はその不快な味の原因は、コロンビア特有の味の特徴や等級に関する誤解、あるいは淹れ方や選び方が少し合っていないだけかもしれません。

この記事では、苦手意識を持ってしまった方に向けて、本来の美味しさを引き出すためのポイントをわかりやすくお話しします。
- コロンビアコーヒーが「まずい」と感じられる主な原因と味の正体
- 独特な酸味と豆の品質(等級)との深い関係
- 酸っぱさを抑えてコクを引き出すための具体的な淹れ方のコツ
- 自分好みの美味しいコロンビアコーヒー豆を見つける選び方
コロンビアコーヒーが「まずい」と言われる主な原因
世界中で愛されているコロンビアコーヒーですが、なぜ一部の人には「まずい」と感じられてしまうのでしょうか。そこには、味の好みや豆の状態など、いくつかの理由が隠れています。
独特な「酸味」が苦手なケース

コロンビアコーヒーを飲んで「まずい」と感じる方の多くが、そのはっきりとした酸味に驚かれていることが多いです。
フルーツのような酸味と味覚の慣れ
コロンビア産の豆は、一般的に柑橘系(シトラス)やベリー系のフルーツのような、明るくジューシーな酸味を持っています。コーヒーのプロや愛好家の間では、この酸味こそが「上質な証」であり、「爽やかで素晴らしい個性」として高く評価されます。しかし、これはあくまで「酸味のあるコーヒー」に慣れ親しんでいる人の感覚です。
日本には古くから「喫茶店文化」があり、深煎りでどっしりとした苦味のあるコーヒーが長年好まれてきました。そのため、私たちの味覚の記憶にある「美味しいコーヒー」は、苦味とコクが中心であることが多いのです。その感覚で、酸味が特徴的なコロンビアコーヒーを口にすると、脳が「これはコーヒーじゃない」「酸っぱい=腐っている?」とネガティブな反応をしてしまうことがあります。つまり、味が悪いのではなく、私たちが持っている「コーヒーの味のイメージ」とのギャップが大きすぎることが、「まずい」と感じる最大の要因と言えるでしょう。
「酸っぱい」の種類を見極める

ここで大切なのは、その酸味が「良質なフルーツ感」なのか、それとも「刺激的なえぐみ」なのかを見極めることです。コロンビアの酸味は本来、オレンジやレモンのような爽やかさを持っていますが、慣れていない人にとっては、ただただ「酸っぱい液体」にしか感じられないこともあります。もし、一口飲んでみて「梅干しのように顔をしかめるような酸っぱさ」ではなく、「レモンティーのような爽やかさ」を感じるのであれば、それはその豆が持つ本来の個性です。「これは苦い飲み物ではなく、果実のジュースなんだ」と意識を変えて味わってみると、意外とその美味しさに気づくことができるかもしれません。
豆の品質や鮮度が落ちている可能性
「酸味」と一言で言っても、美味しいフルーツのような酸味と、腐敗したような不快な酸味は別物です。
酸化による「劣化した酸味」の正体
もし、あなたが飲んだコロンビアコーヒーが、喉にイガイガと残るような嫌な酸っぱさだったり、飲んだ後に胃がムカムカするような感覚があったりした場合、それは豆の個性の問題ではなく、豆の鮮度が落ちて「酸化」している可能性が極めて高いです。コーヒー豆には多くの油脂分が含まれており、焙煎直後から空気中の酸素と触れることで、徐々に酸化が進んでいきます。天ぷら油が古くなると嫌な臭いがして味が悪くなるのと同様に、コーヒー豆の油分も酸化することで「過酸化脂質」へと変化し、これが特有の「すえたような臭い」や「刺すような不快な酸味」を生み出します。
保存環境と流通の問題

特に注意が必要なのは、スーパーマーケットや量販店の棚に長期間陳列されているコーヒー豆や、すでに粉に挽かれた状態で袋詰めされている商品です。これらは焙煎されてから数ヶ月、場合によっては半年以上経過していることも珍しくありません。粉の状態だと表面積が増えるため、酸化のスピードは豆のままの状態と比べて数倍から数十倍も早くなります。「コロンビア産」と書かれていても、中身が古くなってしまっていては、コロンビア本来の甘みや香りは消え失せ、酸化した油の味しかしなくなってしまいます。これを「コロンビアコーヒーの味」だと誤解してしまうのは、あまりにももったいないことです。
注意点:鮮度を見分けるサイン
抽出時にお湯を注いだ際、粉が全く膨らまず、ハンバーグのようにモコモコと盛り上がってこない場合は、ガスが抜けきって鮮度が落ちている証拠です。この状態の豆から抽出される液体の酸味は、ほぼ間違いなく「劣化した酸味」であり、これが「まずい」と感じる原因となります。

焙煎度合いと好みのミスマッチ

コーヒーの味は、豆の産地だけでなく「焙煎(ロースト)」によって劇的に変わります。
サードウェーブと浅煎りの流行
近年、「サードウェーブコーヒー」と呼ばれるブームにより、コーヒー豆本来の果実味や個性を最大限に引き出すために、「浅煎り(ライトロースト〜ミディアムロースト)」で提供するカフェやロースターが増えています。浅煎りは、豆の持つ酸味や香りをダイレクトに表現できる素晴らしい焙煎方法ですが、その反面、酸味が非常に強く際立つという特徴があります。特にコロンビアのような元々酸味の質が良い豆は、その個性を活かすためにあえて浅煎りに仕上げられることが多いのです。
「深煎り好き」にとっての浅煎り
しかし、コーヒーに「苦味」や「コク」、「香ばしさ」を求めている人にとって、浅煎りのコロンビアコーヒーは「薄くて酸っぱいだけ」に感じられてしまうことがあります。これは良し悪しの問題ではなく、純粋な好みのミスマッチです。焙煎が進むにつれて、豆の中の酸味成分は熱分解されて減少し、代わりに苦味成分や香ばしい香りが生成されていきます。つまり、同じコロンビアの豆であっても、焙煎度合いが違えば全く別の飲み物になると言っても過言ではありません。「コロンビアはまずい」と感じたそのコーヒーが、もし色が明るい茶色(シナモン色)をしていたなら、それは単に焙煎度があなたの好みよりも浅すぎただけかもしれません。
そもそもコロンビアコーヒーとは?味の特徴
「まずい」という誤解を解くために、そもそもコロンビアコーヒーが世界でどのように評価されているのか、その本当の姿を知っておきましょう。
コロンビアコーヒーの基本的な味わい

コロンビアは、ブラジルやベトナムに次ぐ世界有数のコーヒー生産国です。その味の基本は、「マイルドコーヒー」の代名詞とも呼ばれるほどのバランスの良さにあります。
世界が認める「マイルドコーヒー」
コーヒー業界において「マイルドコーヒー」という言葉は、単に「味が薄い」や「優しい」という意味ではありません。「水洗式(ウォッシュド)アラビカ種」特有の、雑味がなくクリーンで、香り高い高品質なコーヒーを指す言葉として使われます。コロンビアは国全体でこの水洗式アラビカ種の生産に力を入れており、その品質の高さと安定感は世界トップクラスです。アンデス山脈の標高の高さ、火山灰を含んだ肥沃な土壌、そして多様な気候条件(マイクロクライメット)が、コロンビアコーヒーならではの豊かな風味を育んでいます。
ボディと酸味の絶妙なバランス

良質なコロンビアコーヒーの最大の特徴は、「しっかりとしたコク(ボディ)」と「フルーティーな酸味」、そして「甘み」が見事なバランスで共存している点にあります。口に含んだ瞬間は華やかな酸味を感じますが、すぐに重厚なコクが広がり、後味にはキャラメルやナッツのような甘い余韻が残ります。この「ボディ感」の強さが、他の酸味が特徴的な豆(例えばエチオピアなど)とは一線を画す点です。そのため、ブレンドコーヒーを作る際、味の土台となるベース豆としてコロンビアが選ばれることが非常に多く、私たちは知らず知らずのうちに、美味しいコロンビアコーヒーの恩恵を受けているのです。
コロンビアコーヒーの味の構成要素
- 酸味: 柑橘系やリンゴのような明るい印象
- ボディ: 口の中で感じる液体の重みや質感、コク
- 甘み: 完熟したフルーツやカラメルのような甘さ
- 香り: 甘く香ばしい、豊かなアロマ
等級(グレード)による味の違い

コロンビアコーヒーには、豆の大きさ(スクリーンサイズ)によって等級が決められています。これも味に影響を与える重要な要素です。
豆の大きさが品質の証?
コロンビアでは、コーヒー豆のサイズ(スクリーンサイズ)によって厳格に等級分けが行われています。一般的に、植物の種子は十分に完熟し、栄養をたっぷりと蓄えたものほど大きく育つ傾向があります。そのため、粒が大きい豆ほど味や香りが充実しており、高品質であると考えられています。この格付けシステムにより、私たちは一定の品質基準を満たした豆を選ぶことができるのです。
| 等級名 | スクリーンサイズ | 特徴 |
|---|---|---|
| スプレモ(Supremo) | スクリーン17以上 (約6.75mm以上) | コロンビアコーヒーの最高等級。大粒で見栄えが良く、味わいも濃厚でバランスに優れている。贈答用や高級ブレンドに使われることが多い。 |
| エクセルソ(Excelso) | スクリーン14〜16 (約5.5mm〜6.5mm) | スプレモに次ぐ等級。粒はやや小ぶりだが、コロンビアコーヒーの輸出総量の多くを占める標準規格。日常的に楽しめる安定した味わい。 |
| UGQ | スクリーン14以下も含む (通常はスクリーン13〜12程度) | 「Usual Good Quality」の略。さらに小粒な豆が含まれる等級。安価なブレンドや缶コーヒーの原料などに使われることが多い。 |
「まずい」豆の正体は低等級かも?
もしあなたが飲んで「まずい」と感じたコーヒーが、極端に安価なブレンドコーヒーや量り売りの豆だった場合、そこで使われているコロンビア豆は「スプレモ」ではなく、より等級の低い豆だった可能性があります。等級が下がると、どうしても味わいの力強さが減ったり、雑味の原因となる未熟豆や欠点豆が混入するリスクが高まったりします。逆に言えば、「スプレモ」と明記されている豆を選べば、粒が揃っており、雑味が少なく、コロンビア本来のリッチな味わいを楽しめる確率が格段に上がります。
出典情報
等級基準の詳細については、コロンビアコーヒー生産者連合会(FNC)の公式情報も参考にされています。
(出典:FNC コロンビアコーヒー生産者連合会『コロンビアコーヒーの等級』)
「まずい」を「美味しい」に変える!改善策と選び方

では、手元にあるコロンビアコーヒーを美味しく飲むため、あるいは次に買う時に失敗しないための具体的な方法をご紹介します。
酸味を抑える淹れ方のコツ

「手元にある豆が酸っぱくて飲みにくい…」という場合は、淹れ方を少し変えるだけで酸味を抑えてコクを出すことができます。
1. 抽出温度を高く設定する(90℃〜95℃)
コーヒーの味の成分は、温度によって溶け出しやすさが異なります。一般的に、酸味成分は低温でも比較的早く溶け出すのに対し、苦味やコクの成分は高温で、かつ時間をかけないと十分に出てきません。そのため、普段80℃〜85℃くらいのやや低めの温度で淹れているなら、思い切って90℃〜95℃くらいの熱めのお湯を使ってみてください。高温で抽出することで、苦味成分が積極的に溶け出し、酸味を感じにくくする「マスキング効果」が期待できます。
2. 抽出時間をゆっくり長くする
お湯がコーヒー粉に触れている時間が長いほど、成分は濃く抽出されます。酸味は抽出の前半に出て、甘みやコク、苦味は後半に出てくる傾向があります。サッと短時間で淹れると酸味ばかりが目立つ「未抽出」の状態になりがちです。ハンドドリップであれば、お湯を注ぐスピードを極限までゆっくりにし、普段よりも30秒〜1分ほど長く時間をかけて淹れてみてください。後半に出てくるコクと甘みが酸味の角を取り、まろやかな味わいに変化します。
3. 挽き目を細かく(中細挽き〜細挽き)にする
もしご自身で豆を挽いているなら、ミルの設定を少し細かめに調整するのも有効です。粉が細かくなればなるほど、お湯と触れる表面積が増え、成分がより多く抽出されます。これにより、濃厚なコクと苦味が引き出され、相対的に酸味が目立たなくなります。ただし、細かすぎると雑味や渋みまで出てしまうので、少しずつ調整して好みのポイントを探ってみてください。
自分に合った焙煎度の選び方

もしこれから豆を購入するのであれば、「中深煎り(シティロースト)」以上のものを選ぶのがおすすめです。
「シティロースト」と「フルシティロースト」を狙う
前述の通り、コロンビア豆の酸味は焙煎によってコントロールできます。酸味が苦手な方におすすめなのは、「シティロースト(中深煎り)」から「フルシティロースト(深煎り)」の範囲です。この段階まで焙煎が進むと、コロンビア特有の明るい酸味はかなり穏やかになり、代わりにカカオやダークチョコレートのようなほろ苦さと、キャラメルのような甘い香りが前面に出てきます。コロンビア豆はボディがしっかりしているため、深煎りにしても焦げた味だけにならず、芯のある濃厚な味わいを保つことができるのです。
フレンチロースト(極深煎り)での楽しみ方
さらに苦味が好きな方や、カフェオレにして楽しみたい方は、「フレンチロースト」のような極深煎りを選んでみても良いでしょう。酸味はほぼ完全に消え、パンチのある苦味とスモーキーな香りが楽しめます。ミルクとの相性も抜群で、コロンビア豆の持つコクがミルクに負けず、リッチなカフェオレを作ることができます。「コロンビア=酸っぱい」というイメージを完全に覆す、新しい美味しさに出会えるはずです。
信頼できるショップ選びの重要性
最終的に一番大切なのは、豆の鮮度です。どんなに高級なスプレモでも、焙煎してから何ヶ月も経っていれば美味しくはありません。
「焙煎日」が命

美味しいコロンビアコーヒーを手に入れるための最短ルートは、「いつ焙煎されたか」が明確な豆を買うことです。スーパーの棚にある賞味期限(通常は製造から1年後などに設定される)だけを見るのではなく、パッケージに「焙煎日(Roast Date)」が記載されているかを確認しましょう。理想は焙煎から2週間以内、遅くとも1ヶ月以内の豆です。ネット通販の自家焙煎店などでは、「注文を受けてから焙煎する」というサービスを行っているところも多くあります。こうして手に入れた新鮮なコロンビアコーヒーは、袋を開けた瞬間に部屋中に甘い香りが広がり、お湯を注げば元気に膨らみます。
シングルオリジンを試してみる

また、ブレンドではなく「コロンビア・スプレモ」や「コロンビア・ナリーニョ(特定の産地名)」のように、単一の豆を使った「シングルオリジン」を選んでみるのもおすすめです。信頼できる専門店が扱うシングルオリジンは、その豆の個性が最も輝く焙煎度合いで仕上げられており、品質管理も徹底されています。これまで飲んでいた「なんとなく酸っぱいコロンビア」とは次元の違う、クリアで甘い、本当に美味しいコロンビアコーヒー体験があなたを待っています。
「コロンビアはまずい」と決めつける前に、ぜひ一度、深煎りの新鮮な豆や、抽出温度の調整を試してみてくださいね。きっと新しいコーヒーの楽しみが見つかると思います。
※正確な情報は公式サイトをご確認ください。また、健康への影響などが気になる場合は、最終的な判断は専門家にご相談ください。


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