ブラジルのコーヒー豆生産量と世界シェア|2025年実績と2026年の展望

ブラジルのコーヒー豆生産量と世界シェア|2025年実績と2026年の展望

2025年も残すところあとわずかとなりましたね。今年もコーヒー価格の変動にドキドキさせられた1年でしたが、皆さんにとってどんなコーヒーライフでしたか? 世界最大の生産国であるブラジルでは、今年の収穫が終わり、すでに次の2026年に向けた準備が始まっています。

「結局、2025年のブラジルコーヒーはどうだったの?」「来年は豊作になるの?」そんな疑問を持つ方のために、この記事では2025年の生産実績の振り返りと、最新データに基づく2026年の展望を徹底解説します。専門的な用語も噛み砕いてお話ししますので、年末のコーヒーブレイクのお供にぜひご覧ください。

この記事でわかること
  • 世界シェア約40%を占めるブラジルの圧倒的な生産規模と2025年の実績
  • 生産量が2年周期で増減する「隔年結果」のメカニズムと今年の天候
  • 2025年はアラビカ種が減産、ロブスタ種が増産となった背景
  • 2026年は「オモテ年」で回復期待? 最新の生産予測と技術革新
目次

ブラジルのコーヒー豆生産量と世界シェアの現状

まずは基本のおさらいとして、ブラジルが世界のコーヒー市場においてどれほど巨大な存在なのか、その実力を具体的なデータと共に紐解いていきましょう。2025年の市場を振り返る上でも、この基礎知識があるのとないのとでは理解度が全く違います。

世界ランキング1位を誇る圧倒的シェア

コーヒー好きの方なら「ブラジルが世界一の生産国」であることはご存じかと思いますが、その規模感は他の追随を許さない、まさに桁違いのレベルです。150年以上もの長きにわたり王座を守り続けていること自体が驚異的ですが、近年のデータを見るとその支配力がより鮮明になります。

世界ランキング1位を誇る圧倒的シェア

直近の統計データ(2023/24年度〜2024/25年度)を見ても、ブラジルのコーヒー豆総生産量は約6,600万袋(1袋60kg換算)前後の規模を維持しています。これは世界全体のコーヒー生産量の約37%から40%を占める数字です。世界のコーヒーの3杯に1杯以上がブラジル産であると考えると、その影響力の大きさが実感できるのではないでしょうか。

比較対象として2位のベトナムを見てみましょう。ベトナムもコーヒー大国ですが、その生産量は約2,900万袋で、世界シェアは約17〜18%です。つまり、ブラジルは2位のベトナムの2倍以上の生産量を誇り、3位のコロンビア、4位のインドネシア、5位のエチオピアといった主要生産国の生産量をすべて足しても、ブラジル一国にようやく並ぶかどうか、というレベルなのです。

順位国名生産量(60kg袋)世界シェア(目安)主な特徴
1ブラジル6,470万 – 6,630万37 – 40%アラビカ・ロブスタ両方を大量生産する唯一の国
2ベトナム2,900万17 – 18%ロブスタ種に特化、インスタント向けが主力
3コロンビア1,320万8%水洗式(ウォッシュド)アラビカの最高峰

(出典:米国農務省(USDA)『Coffee: World Markets and Trade』)

この圧倒的なシェアゆえに、ブラジルは国際市場において「プライス・メーカー(価格決定者)」と呼ばれています。2025年も、ブラジルの降雨予報ひとつでニューヨークやロンドンの相場が乱高下しました。「ブラジルのミナスジェライス州で雨が降らない」という予報が出るだけで世界中のバイヤーが動揺し、価格が跳ね上がる。ブラジルの生産量がわずか5%変動するだけで、世界の需給バランスが崩れ、私たちの手元に届くコーヒーの価格にまで波及する。それが現在のコーヒー市場のリアルな構造なのです。

過去の推移と隔年結果のメカニズム

ブラジルのコーヒー生産量の推移グラフを見ると、きれいな右肩上がりではなく、まるでノコギリの刃のように1年ごとに増減を繰り返していることに気づきます。これはブラジルの農業技術が未熟だからではなく、コーヒーの木、特にアラビカ種が持つ独特な生理現象である「隔年結果(Biennial Cycle)」によるものです。

このメカニズムは非常に興味深いものです。コーヒーの木は、自分の体力の限界まで実をつける「豊作の年(オモテ年 / On-year)」と、実を減らして体力を回復させる「不作の年(ウラ年 / Off-year)」を2年周期で繰り返します。

隔年結果のサイクル詳細

隔年結果のサイクル詳細
  • オモテ年(On-year): 枝にびっしりと実がつきます。しかし、果実を育てるために大量の養分を使い果たしてしまい、翌年に実をつけるための新しい枝(結果枝)の成長が抑制されます。
  • ウラ年(Off-year): 実が少ないため、樹木は回復と成長にエネルギーを注ぎます。新しい枝が長く伸び、翌年の豊作に向けた準備期間となります。

2025年の収穫は、まさにこのサイクルの「ウラ年(不作の年)」にあたっていました。ブラジルの生産者たちも「スケルトン剪定」などでこの波を小さくしようと努力していますが、2021年の霜害のような過去のダメージの影響もあり、今年は特にアラビカ種の減少が目立つ年となりました。自然のリズムには逆らえない、農業の難しさがここにあります。

アラビカ種とロブスタ種の違いと内訳

アラビカ種とロブスタ種の違いと内訳

ブラジルコーヒーの強さは、量だけではありません。「ポートフォリオの多様性」こそが、最強たる所以です。多くの生産国が「アラビカ種」か「ロブスタ種」のどちらかに特化している中、ブラジルはその両方を大量に供給できる世界で唯一の国なのです。

アラビカ種:香り高いレギュラーコーヒーの主役

ブラジル全体の生産量の約6〜7割を占めるのがアラビカ種です。酸味や香りが豊かで、私たちが喫茶店やカフェで飲むレギュラーコーヒーのほとんどはこの品種です。ブラジル産アラビカは、酸味が穏やかでナッツやチョコレートのような香ばしい甘みがあり、ブレンドのベースとして世界中で愛されています。2025年はウラ年の影響を大きく受け、供給がタイトになりました。

ロブスタ(コニロン)種:力強い縁の下の力持ち

残りの3〜4割を占めるのがロブスタ種で、ブラジルでは「コニロン」と呼ばれています。こちらは苦味が強く、カフェイン含有量も多いため、主にインスタントコーヒーの原料や、エスプレッソのブレンド用として使われます。病害虫や暑さに強く、低地でも育つタフな品種です。

特筆すべきは、2025年の実績におけるコニロン種の健闘ぶりです。アラビカ種が不作で苦しむ中、灌漑設備(かんがいせつび)の導入が進んだコニロン種は記録的な豊作となり、ブラジル全体の生産量を底支えしました。かつては「質より量」の安価な豆という扱いでしたが、最近では「ファイン・ロブスタ」と呼ばれる高品質な豆も登場しており、アラビカ不足を補う救世主として存在感を増しています。

ミナスジェライス州などの主要産地

「ブラジル産コーヒー」と一口に言っても、ブラジルは日本の国土の約23倍という広大な面積を持っています。産地ごとに今年の気象条件の影響も異なりました。ここでは主要な「ミクロ・リージョン」の特徴と、2025年の状況を振り返ります。

ミナスジェライス州(Minas Gerais)

ミナスジェライス州(Minas Gerais)

ブラジル国内生産の約50%を占める、絶対的な王者です。ほぼ全量がアラビカ種であるため、2025年の「ウラ年」の影響を最も強く受けました。

  • 南ミナス(Sul de Minas): 州南部の丘陵地帯。伝統的な中小規模農園が多く、甘みとボディ感のバランスが良いコーヒーを作ります。今年は降雨の遅れにより開花が不均一となり、収穫量に影響が出ました。
  • セラード・ミネイロ(Cerrado Mineiro): 州西部の高原地帯。大型機械による収穫が100%可能で生産効率が高い地域です。しかし、2024年から続く干ばつと熱波の影響を受け、灌漑を行っていても植物が一時的に成長を止める(ドーマンシー)など、厳しい環境下での栽培となりました。
  • マタス・デ・ミナス(Matas de Minas): 州東部の山岳地帯。手摘み収穫が主流で、近年スペシャルティコーヒーの産地として人気です。2025年は古い樹木の老朽化と不規則な天候により、生産量は伸び悩みました。

エスピリトサント州(Espírito Santo)

エスピリトサント州(Espírito Santo)

ブラジル第2の生産州で、ここは「ロブスタ(コニロン)種の首都」です。2025年のMVPとも言える地域で、高度な灌漑技術とクローン苗のおかげで、干ばつを乗り越えて豊作を記録しました。世界的にロブスタ(ベトナム産など)が不足する中、ここからの供給が市場を救いました。

なぜ生産量が多いのか歴史的背景

ブラジルがこれほどのコーヒー大国になった背景には、300年にわたるドラマチックな歴史があります。コーヒーがブラジルに初めて持ち込まれたのは1727年。19世紀には「ファゼンダ(Fazenda)」と呼ばれる巨大なプランテーション農園システムで生産が爆発的に拡大し、国の近代化を牽引しました。

なぜ生産量が多いのか歴史的背景

かつては「質より量」の時代もありましたが、1990年代の市場自由化をきっかけに大きく変わりました。政府の保護がなくなったことで、生産者は生き残りをかけて技術革新に取り組みました。ブラジル農牧研究公社(Embrapa)を中心とした研究機関と農家が協力し、品種改良や土壌改良、灌漑技術の開発に没頭しました。

その結果、過去30年間で「作付面積を減らしながらも、単位面積当たりの収量を約4倍に増やす」という魔法のような成果を上げました。2025年、厳しい気候条件の中でも一定の供給量を維持できたのは、こうした長年の技術革新の積み重ねがあったからこそなのです。

2025年実績と2026年以降のブラジルコーヒー豆生産量の展望

さて、ここからは「答え合わせ」と「未来予測」の時間です。2025年の収穫は実際どうだったのか、そしてこれからやってくる2026年はどうなるのか。最新のデータと現地情報をもとに解説します。

2025年の実績振り返りと最新見通し

2025年の収穫(2025/26年度)は、まさに事前の予測通り、品種によって明暗がくっきりと分かれる年となりました。

まず、アラビカ種については残念ながら「減産」となりました。理由は、生理的な「ウラ年(不作のサイクル)」であったことに加え、生育期における深刻な干ばつと、開花期の雨不足が重なったためです。収穫された豆も、高温障害によりサイズが小さくなる「小粒化」が一部で見られ、歩留まり(製品化率)が悪化しました。

2025年(2025/26年度)の実績まとめ

  • アラビカ種: ウラ年+干ばつのダブルパンチで、前年比で10%以上の減産となりました。特に高品質な豆の供給がタイトになっています。
  • ロブスタ種: 灌漑の効果で記録的な豊作を達成しました。USDA(米国農務省)のデータなどでは前年比で大幅なプラスとなり、アラビカの減少分を量的にカバーしました。

結果として、2025年のブラジルは「総量は維持したが、中身はロブスタ比率が高まった」という年でした。これが、今年のレギュラーコーヒー価格が高止まりし、インスタント用原料が比較的安定していた背景です。

気候変動や霜のリスクと今後の対策

2025年を振り返ると、気候変動がもはや「将来の不安」ではなく「現在の危機」であることを痛感させられます。特にアラビカ種は高温に弱く、適温を超えると光合成が停止してしまいます。

しかし、ブラジルの生産者たちは手をこまねいているわけではありません。この危機に対し、2025年も様々な適応策が進められました。

  • 新品種の導入: 「アララ(Arara)」や「パライソ(Paraiso)」といった、高温や乾燥、病気に強い次世代の品種への植え替えが加速しています。
  • 灌漑の拡大: 特に効果を上げているのが「点滴灌漑(ドリップ・イリゲーション)」です。水を効率的に根元に与えることで、2025年の干ばつ下でも枯死を防ぎました。
  • シェードツリー: 直射日光を遮るために背の高い木を一緒に植える手法も、一部で再評価されています。

輸出量や日本への供給への影響

2025年の生産結果は、現在進行形で日本への輸出に影響を与えています。アラビカ種の減産により、日本国内でも高品質なブラジル豆(サントスNo.2など)の価格は強含みで推移しています。

現在、日本のスーパーやカフェで見かけるブラジルコーヒーは、この「2025年産の豆」が中心になりつつあります。もし「いつものブレンドの味が少し変わったかな?」と感じたら、それはアラビカ種の供給不足を補うために、ブレンド比率が調整されているからかもしれません。一方で、ロブスタ種は豊作だったため、缶コーヒーや業務用の安価なコーヒーについては、深刻な供給不足は避けられています。

市場価格と為替レートの関係性

2025年のコーヒー価格を語る上で、為替の影響も無視できません。今年は「レアル」と「ドル」の関係が、輸出量に微妙なブレーキとアクセルをかけ続けました。

基本的に「レアル安・ドル高」になると、ブラジルの生産者は輸出収入(レアル換算)が増えるため、輸出意欲が高まります。2025年もこの傾向は見られましたが、一方で肥料コストの上昇などが利益を圧迫する場面もありました。ただ、コーヒー豆と肥料を交換する「バーター取引」の比率は改善傾向にあり、生産者の収益性は最悪期を脱しつつあります。これが、2026年に向けた生産意欲の維持につながっています。

2026年は「オモテ年」!技術革新による増産の可能性

2026年は「オモテ年」!技術革新による増産の可能性

さて、一番気になる来年、2026年の展望です。朗報があります。植物のサイクル上、2026年(2026/27年度)はアラビカ種の「オモテ年(豊作の年)」にあたります。

アラビカ種復活

StoneX社などの早期予測によると、2026年はアラビカ種の生産量が大幅に回復し、総生産量が7,000万袋レベルに戻る可能性があると期待されています。特にアラビカ種は、今年の木の休息期間を経て、20%〜30%近い増産が見込まれるというデータもあります。

復活を加速させる、未来への投資

もちろん、2025年末から2026年初頭にかけての天候(特に開花期の雨)次第ではありますが、技術革新も進んでいます。ロブスタ種では新しいクローン苗の導入で収穫量が飛躍的に伸びており、アラビカ種でもGPSを使った精密農業や、熟した実だけを選んで収穫するハイテク収穫機の導入が進んでいます。2025年は我慢の年でしたが、2026年はブラジルコーヒーの底力を見せる「復活の年」になるかもしれません。

ブラジルのコーヒー豆生産量のまとめ

私たちのコーヒーはどう変わるか?

最後に、2025年の総括と2026年への期待をまとめておきます。

  • ブラジルは世界シェア約40%を握る絶対的な王者であり、その動向が世界のコーヒー価格を決める。
  • 2025年は「隔年結果」のウラ年と干ばつにより、アラビカ種が減産、ロブスタ種が増産という結果になった。
  • 日本国内でも、現在アラビカ種の価格は高止まりしているが、ロブスタ種の供給は安定している。
  • 2026年はアラビカ種が「オモテ年」を迎えるため、大幅な増産と価格安定への期待が高まっている。
  • 気候変動リスクはあるものの、品種改良やハイテク化で生産体制は強化されている。

2025年は少し厳しい年でしたが、2026年は美味しいブラジルコーヒーがもっと手軽に楽しめるようになるかもしれません。遠い南米の空模様と農家さんの努力に感謝しつつ、新しい年のコーヒーを楽しみに待ちましょう。

NNSCoffeeでは、2026年もその時々のベストな豆を厳選してお届けします。新しい収穫情報が入ったらまたすぐにシェアしますので、お楽しみに!

※本記事に含まれる数値データや将来予測は、執筆時点(2025年末)での各機関のレポートや市場動向に基づいた見解です。天候や為替の変化により状況は変動しますので、ビジネス上の判断や投資などを行う際は、必ず最新の公式情報をご自身でご確認ください。

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