「新しいグラインダーを買ったけど、いつものレシピで淹れるには何クリックにすればいいの?」
そんな悩みを抱えるコーヒーラバーのために、設計思想の異なる主要グラインダー5機種の「粒度(挽き目)換算表」を作成しました。
【結論】5機種・粒度換算マスターテーブル
まずは結論から。世界的な基準となっているComandante C40の「25クリック(中細挽き)」をベースに、各機種の推奨設定をまとめました。
以下の画像が、各抽出方法へのオフセット値をまとめたマスターテーブルです。特に使用頻度の高い「ドリップ (V60)」を基準点(ハイライト)としています。

(画像が表示されない場合のテキスト版)
| 抽出方法 | 粒度イメージ | C40(クリック) | K-Ultra(数字) | Timemore C2(クリック) | Timemore C3(クリック) | みるっこ(ダイヤル) |
| エスプレッソ | パウダー状 | 10 – 15 | 3.5 – 4.5 | (10-12) | (7-8) | 不可 |
| マキネッタ | 細かい塩 | 15 – 20 | 4.5 – 5.5 | 12 – 15 | 9 – 11 | 2.5 – 3.5 |
| エアロプレス | 食卓塩 | 20 – 24 | 5.5 – 6.5 | 15 – 18 | 12 – 14 | 3.5 – 4.5 |
| ドリップ (V60) | グラニュー糖 | 24 – 28 | 7.0 – 8.0 | 19 – 22 | 14 – 16 | 4.0 – 5.5 |
| ドリップ (Kalita) | 粗めの砂糖 | 28 – 32 | 8.0 – 9.0 | 23 – 25 | 17 – 19 | 5.5 – 6.5 |
| フレンチプレス | 岩塩・粗塩 | 32 – 38 | 9.0 – 10.0 | 26 – 30 | 20 – 23 | 7.0 – 8.5 |
| 水出し | 割った胡椒 | 40 + | 1.0.0 + | 30 + | 24 + | 9.0 – 10.0 |
💡 表の読み方と注意点
- 基準点: 本ガイドでは、Comandante C40の「25クリック」を共通言語として設定しています。
- K-Ultraの表記: 「7.5」は「ダイヤル数字7、サブ目盛り5(=75クリック)」を意味します。「1.0.0」は1周(100クリック)回った後の0を指します。
- ()の表記: 物理的には挽けますが、調整幅が粗すぎる、または時間がかかりすぎるため推奨されない設定です。
機種別・詳細調整ガイド
「表の通りに合わせたのに味が違う」という場合、各機種の刃(バー)の特性が影響しています。ここからは機種ごとのクセと調整のコツを解説します。
Timemore C2 vs C3:決定的な「ズレ」の正体
見た目はそっくりなこの2機種ですが、中身(刃)は別物です。「C2の設定をそのままC3で使う」のは失敗のもとです。
- Timemore C2 (標準コニカル刃)
- 特性: 粒度分布がやや広く、適度な微粉が出るため、ボディ感(コク)のある味わいになりやすいのが特徴。
- V60推奨 (20〜22クリック): これより細かく(例:18以下)すると、微粉でフィルターが詰まり、渋みの原因になります。
- Timemore C3 (S2C 660刃)
- 特性: 「Spike to Cut(突き刺して切る)」機構により、微粉が劇的に少なく粒が揃います。湯抜けが非常に良いため、C2よりも「細かく」設定する必要があります。
- V60推奨 (14〜16クリック): もしC2と同じ感覚で「20クリック」にすると、お湯がザルのように通り抜け、味の薄いコーヒーになってしまいます。恐れずに細かく設定してください。
1Zpresso K-Ultra:微粉量と味わいのコントロール
- 特性: 48mmの巨大な刃で高速粉砕します。C40に近いクリアさを持ちますが、フレーバーの輪郭はより「くっきり(Bright)」と出る傾向があります。
- C40との互換性:
- C40(25クリック)≒ K-Ultra(7.2〜7.5)
- K-Ultraは調整幅が非常に細かいため、C40の「1クリック」の間にK-Ultraなら「1.5クリック分」の微調整が可能です。
- 甘さを出したい時: 7.0へ(少し細かくして抽出効率を上げる)
- すっきりさせたい時: 7.8へ(少し粗くして微粉の影響を下げる)
みるっこ R-220:電動ミルの「ゴーストトゥース」特性
- 特性: 臼のように「すり潰す」形状のため、粒子が丸く、微粉が極端に少ないのが最大の特徴です。
- ハンドミルとの決定的な違い:
- C40やTimemoreと同じ「見た目の粒の大きさ」に合わせると、みるっこは味が薄く(酸っぱく)なりがちです。これは微粉が少なすぎて、お湯の滞留時間が短くなるためです。
- 運用のコツ: C40よりも**「見た目で少し細かそう」に見えるダイヤル(4.0〜4.5)**を選ぶのが、味の濃度感を合わせるポイントです。
シチュエーション別・おすすめの使い分け
所有しているミルが複数ある場合、目的によって使い分けるとコーヒーライフがより豊かになります。
| シチュエーション | 推奨機種 | 設定のヒント |
| 最高の一杯を淹れたい (浅煎り・フルーティ) | Comandante C40 | 25クリックからスタート。 豆の個性を最も綺麗に引き出します。 |
| 毎朝のルーティン (速さ・手軽さ) | 1Zpresso K-Ultra | 7.5設定。 外部ダイヤルで調整が速く、粉砕スピードも爆速です。 |
| コスパ重視・入門 (バランス型) | Timemore C3 | 15クリック。 C2よりクリアな味。価格以上の性能ですが極細挽きは苦手。 |
| コクのある深煎り (喫茶店のような味) | みるっこ / C2 | みるっこ:4.5 / C2:20。 適度な微粉や粒子の形状が、コーヒーに厚み(ボディ)を与えます。 |
粒度合わせの裏技:抽出時間(Drawdown Time)で合わせる
最後に、異なるグラインダー同士の粒度をより厳密に合わせるプロのテクニックを紹介します。それは「お湯が落ち切る時間」を合わせることです。
粒の形状が違う以上、見た目を完全に一致させることは不可能です。しかし、抽出にかかる時間を揃えることで「味の濃度」を近づけることができます。
- 基準を作る: C40(25クリック)でいつものレシピで淹れ、タイムを測る(例:2分30秒で落ちきり)。
- ターゲット機で調整する:
- K-Ultra: 同じタイムになるようにダイヤルを回す(恐らく7.2付近)。
- みるっこ: 恐らく4.0付近まで細かくしないと、C40と同じタイムにはなりません。
- Timemore C3: 抜けが良いので、タイムを合わせようとすると自然と設定は細かくなります。
この表を出発点に、ぜひご自身の舌とストップウォッチで「自分だけの正解」を見つけてみてください!
最後に
ここまでお読みいただきありがとうございます。
「なんでこの5機種なの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、理由はとてもシンプルです。これらが、私が実際に所有し、日々愛用しているグラインダーたちだからです(笑)。
世の中には他にも素晴らしいミルがたくさんありますが、カタログスペックだけではなく、毎日自分の手で挽いて、飲んで、確かめた「実感値」としてのデータをお届けしたかったため、手持ちの5機種に限定した比較となりました。
もし、あなたがこの中のどれかをお持ちで、新しいミルを検討していたり、レシピの調整に迷っていたりするなら、このレポートが少しでもコーヒーライフの参考になれば幸いです。
それでは、良いコーヒータイムを!






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